ブランディングディレクター/台日コンサルタント 池田真央さんに聞く、ギフトの思い出

出版社で女性誌のファッション&ビューティエディターとして勤務。その後、自然豊かな宮崎県に移住し、2016年から台湾へ生活ベースを移した池田真央さん。都会から地方、ハイブランドから大自然、さまざまな環境で“よいもの”を見てきた彼女のギフトは「木」と「手しごと」がキーワードなのだそう。早速、思い出の話を聞いてみましょう。

結婚式の引き出物が「木」⁉︎

昔から野山が好きだったという池田さんと木の関係。どうやら長く親密なようです。

「10数年前にあげた結婚式では、会場をお花ではなく草木で装飾し、引出物としてお一人に1本ずつ植林される木の権利と証明書をオリジナルのエコバッグに入れてお渡ししました」。

どうして木を贈ることに?との問いに「当時は、10年後に家具にするための木材として譲渡する手続きをすれば何割かのお金がお手元に渡るシステムだったんです。不必要な物をお渡しするより、実物は手元になくとも私たちが住む地球が豊かになって、皆さんと一緒に森をつくれているようで、さらにはお金がもらえるなんて最高!って迷わず決めました。何より自分たちらしいなって思ったのです」とニッコリ。自分たちらしいギフトが見つかるということは、もうそれ自体が贈り手にとってのギフトと言えそうです。

お料理にまつわる「木」の道具

「こちらは娘たちが生まれる前、世界文化社で女性誌の編集をしていた時に先輩方から結婚祝いにいただいた竹製の蒸籠です。なんとお料理上手な編集長直筆の蒸籠料理レシピブック付き! 仕事に夢中でお料理なんてまったくしなかった私が、茹でるより蒸す方が栄養価が高いことも、なんと言っても蒸し料理はおいしいってことも、このギフトのおかげで学ぶことができたのです。うちの娘たちの離乳食は、ほぼこの蒸籠でつくったと言って過言ではありません」。

今ではご友人のお祝い事に蒸籠をプレゼントすることもあるそう。池田さんのInstagramには一時お嬢さんのためにつくっていたお弁当写真が並んでいました。なるほど、お子さんのお弁当も母から子への贈り物。

「義母から譲られた静岡県の“井川めんぱ”と実母からの“秋田の曲げわっぱ”を愛用しています。木のお弁当箱に詰めるとおいしそうに見えるし、不思議と味もおいしくなる。それにギフトの原点ってむかしむかしから“食”なのではないかって思っています。自分が食べるものでも誰かにつくるものであっても、その人のことを想って料理をするって、ギフトそのものじゃないかなって」。

どうして「木」に惹かれるの?

池田さんは、集英社「eclat」編集部にお勤め中に第1子を出産。お子さんの通う“野生的”な保育園で子どもの育ちの“進化”や“自然”のおもしろさに開眼したのだといいます。その後、東日本大震災を機によりのびのびとしたところで暮らしたいと、生まれ育った東京から宮崎県へ。

「農家さんから直接野菜を買えたり、お味噌屋さんの蔵を見せていただいてお買い物できたり、お向かいさんからつきたてのお餅を分けていただいたり。人も海も山も、とにかく宮崎の環境があまりにも素晴らしくて。長女や宮崎で生まれた次女と身近な自然に向き合いながら、子どもひとりひとり、木々も草花もひとつひとつが唯一無二の存在なんだってことも、大人や人間をはるかに凌駕した存在であるってことも、しみじみ感じる暮らしでした。この頃から自分が何かを買うときは、木製の製品やつくり手の顔が見えるものを積極的に選ぶようになっていきました」。

そう話す池田さんの手元にはおばあさまから譲られたという木のリングが。こちらも手しごとで作られた組み木のデザインだそう。

Let’s Play

2015年に宮崎県で会社を設立した1年後に生活ベースは台湾へ移すことになりました。

「長女の小学校入学のタイミングで、いつかと夢見ていた海外生活を始めました。台湾にした理由はシュタイナー教育の小学校がいくつもあったことと、素晴らしい台湾の友人たちに出会えたから。それに台湾の植物に惹かれたっていうのもあるかもしれません(笑)」。

今は台湾、宮崎、東京、静岡などあちらこちらにクライアントがいて、ブランディングやコンサルティング、編集などをお仕事にしていると言います。2018年には旦那様から引き継いで日本の会社の代表取締役に就任。その際にご家族から贈られたのがこのエルメスのキーホルダーだそうです。エルメスといえば、手しごとの代名詞のようなブランド。

「でもまさかの野球のボール型(笑)。野球⁉︎ いえ、ほとんど興味はないんですけれど、長女がこれはママにぴったりだと選んでくれたらしくて。でもよくよく聞いたら、2018年のエルメスの年間テーマは“Let’s Play”。今年限定のデザインなのだそう。Let’s Playってすごくいい言葉ですし、弾むボールだなんて縁起がいいなと、今は宝物です」。

感謝の気持ちは自分の手を動かしたい

池田さんがどなたかにギフトをお渡しする時に、“オマケ”としておつけしているというトランスパレントペーパーで折ったスターを見せてもらいました。小さな折り紙で折った作品は、特に海外の方からとても驚き喜ばれるそうです。不器用だと思い続けてきたご自分が、細かな手仕事ができる日本人なんだなと気づいたのは台湾に住んでからなのだとか。

「だから張り切ってめちゃくちゃ小さなトランスパレントペーパーで折っていたら、最近目が霞んできちゃって(笑)」。

シュタイナーの学校に通うお子さんもやはり手しごとが大好きで、自分がつくったものや見つけてきたものをプレゼントしてくれると言います。

「もちろん高級ブランドのものも嬉しいし、子供たちからもらった折り紙の鶴もやっぱり嬉しい。同じように大事にして、その嬉しい思いを今度は私はどなたかへのギフトでお返ししていく。その積み重ねで、日々にギフトが満ちてく、そんな気がしています」。

池田真央 いけだまお

株式会社OMIJIKA代表取締役。ブランディングディレクター・台日コンサルタント・編集者・2児の母。東京生まれ。世界文化社『MISS家庭画報』編集部、集英社『eclat』編集部勤務を経て、フリーエディターへ。宮崎県へ移住しEC会社で実績を積んだ後、グラフィックデザイナーの夫と日本で広告会社「株式会社OMIJIKA」、台湾で「優美吉可有限公司(OMIJIKA台湾)」を設立。台湾や日本のイベント運営・企画から食品、アパレルなどのブランディング、パッケージデザイン、輸出入・販路に関するサポートなど、仕事の内容は多岐にわたる。『ガラスの仮面』の大ファンで、北島マヤさんのような守備範囲の広い仕事を目指している。『&COSME』にて台湾のコスメを紹介する連載を執筆中。

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